スウェーデン Sahlgrenska大学病院 訪問/2016-09-23

  • 森 圭介
  • 長崎大学 医学部 出身
  • 2011年 入局

 9月初旬スウェーデンのヨーテボリにあるSahlgrenska大学病院を訪問しました。その目的は、スウェーデンにおける高齢者の大腿骨近位部骨折に対するシステム化された診療体制を見学することでした。スウェーデンでは政府が大腿骨近位部骨折の症例を24時間以内に手術することを75%以上の症例で達成するよう目標を設定しています。この病院では、年間1200例の大腿骨近位部骨折の症例があるがもう少しでその目標を達成できそうとのことでした。

 スウェーデンの大腿骨近位部骨折のシステムの特徴を以下に簡単に列挙します。

・救急隊が大腿神経ブロックを施行することで早期の除痛が可能
・搬送されたら直接レントゲン室で画像検査を行いそのまま病室へ移送し手術までの無駄な時間が短縮される(いわゆるFast track)
・大腿骨近位部骨折専用の手術室及び術者がおりいつでも手術が可能
・術前後は老年科の医者が管理し、骨粗鬆症の治療に積極的に取り組む

 以上のことがスウェーデンの全ての病院で当たり前のように行われています。日本では、まだ数日待機して手術をする施設があるという話をするとスウェーデンの医師たちが何故すぐ手術をしないんだと不思議そうなリアクションを取っていたのがとても印象的でした。今回見学した全てのシステムを日本に導入することは難しいと思いますが取り入れることができることは積極的に取り入れてより良い治療ができればと思いました。

★頂いたご質問とそれについての回答

スウェーデンでの大腿骨近位部骨折治療について

【抗血小板薬の休薬は?】
 抗血小板薬服用の有無は全く手術に影響ありません。リバースが可能であれば行います。DVTの予防もガイドラインにそって行いますが、それは老年科と循環器科が決定します。

【術前の絶飲水は?】
 同様に絶食も関係ありません。食事をしているから待つという判断はしていません。

【麻酔は大腿神経ブロックだけですか?それとも腰麻または全麻を追加するのですか?】
 大腿神経ブロックは救急隊の仕事で、麻酔は腰椎麻酔や全身麻酔のいずれかを老年科と麻酔科で決定します。

【骨粗鬆症治療について】
 骨粗鬆症治療は老年科が基本行い、いわゆるガイドラインに沿った治療です。

【コメント】
 スウェーデンでは、国民皆保険のうえすべての症例の登録が義務付けされているので、医療の質も一定のレベルを担保されています。
 整形外科医の仕事は手術をすることで、その他の管理は基本老年科がすることになっています。それにより、人口160万人の医療圏をカバーし、年間1200例の手術が可能となっているとのことです。
 日本における大腿骨近位部骨折の治療はここ20年全く進歩していません。使うインプラントが多少変わっただけです。