AO Principles Course Davos 参加レポート/2010-01-22

  • 村 俊之
  • 佐賀医科大学 出身
  • 1999年 入局

今回、2009年12月13〜18日にスイスのダボス(Davos)で開催されたAO Principles Course(AO Trauma Course—Principles in Operative Fracture Management)に参加してきましたので報告します。
AO Courseとは骨折治療の研究や開発のほか、世界中で教育活動を行っているAO Foundation(AO財団)が開催しており、国内外で多様のコースが開催されています。年に1回AO Foundationの本部のあるスイスのダボスでコースが開催されており、今回は日本からPrinciples Courseに16名、Advances、Specialty、Masters Courseに15名 の総勢31名が参加していました。長崎大学整形外科からはAdvances Courseに参加した福島先生と僕の2名が参加しました。2人とも社会人大学院生で大学病院勤務という比較的時間を自由に使える立場でもあり、上司の先生方にも参加を快諾していただき、国内の移動も含めると9日間のツアーに行かせてもらいました。
 コースが開催されたダボスはスイス東部の標高1560mに位置し、世界経済フォーラム(通称ダボス会議)が毎年開催されることで知られている街です。冬季はスキーリゾートで多くの滞在客を集め、夏季には避暑や登山などの自然愛好家が集まります。僕らが滞在した期間はまさにスキーシーズンでした。約13時間のフライトのあと、2時間半ツアーバスに揺られ夜間にダボスに到着しました。翌日はコースのオープニングイベントとしてスキーレース大会とスキー場の山小屋でウェルカムパーティーが開催されました。山小屋では温かいホットワインやソーセージなどの軽い食事がふるまわれ和やかな雰囲気でした。僕と福島先生はスノーボードでレースに参加しましたが、レースといってもタイムを競うだけでなく自分の申告したタイムにどれだけ近いかを競う部門もあり、滑りに自信のない僕でも気軽に参加できました。夜にはコース参加の日本人で懇親会があり、明日からのコースに備えワインで乾杯し、各地の病院の先生方とも交流を深めることができました。
僕が参加したPrinciples Courseは骨折治療の基本原理、各種固定法の概念、様々な骨折に応じた治療戦略などを、レクチャー、10人程度の少人数でのグループディスカッション、骨モデルや実際の手術器具を用いた実技トレーニングといった内容で学んでいくコースです。期間は5日間で、午前中は朝8時から開始され昼12時まで、それから夕方16時まではゆっくり昼休みがあり、午後のコースはまたぎっしりと16時から20時まであります。コースの内容はすべて英語で、僕の乏しい英語力ではレクチャーについて行くのが精いっぱいでしたが、なんとか内容を理解しようと努めました。
グループディスカッションではなかなか自分から意見を発言することはできませんでしたが、実際の症例をもとに活発な討論が繰り広げられており非常に刺激になりました。討論に積極的に参加できる英語力があればもっと実り多いものであったと思います。実技トレーニングでは2人1組となりテーブルごとに6組ずつ実習しました。僕らのテーブルはすべて日本人で、テーブルごとに指導していただくfacultyの先生も2名のうち1名は日本人でしたので気軽に質問させていただいたり、テーブル間での意見交換もできたりと充実していました。内容はラグスクリューやプレートでの骨片間圧迫、脛骨骨折に対しての髄内釘と創外固定、肘頭骨折のテンションバンドワイヤリング、足関節顆部骨折(44-C1)のマネージメント、大腿骨転子部骨折に対するPFNA、大腿骨頚部骨折に対するCCSを使用した固定、large distractorを使用した大腿骨顆部、脛骨顆部骨折の整復法、骨盤骨折の創外固定と盛りだくさんでした。今回のコースから始まったトレーニングとして、前腕骨折(22-C1)に対してトレーシングペーパーを使ったスケッチを行い、術前計画を立てた後に実際に固定を行うというものもありました。コースを通じて外傷における軟部組織の重要性、各固定法の原理、概念、ねじ1本1本の意味を改めて認識させられました。
コースにはスキーウェアーでも参加可能で、昼休みの間にスキー場に直行することもできます。僕らも午前のコースが終わると昼食を急いで済ませスキー場へ向かっていました。スキー場の規模の雄大さは感動的で、初心者から楽しめるような広いコースから、アップダウンのある山岳コースなど様々なコースがありました。スキー場の頂上からの眺めも絶景で、僕らが滞在した期間は天候も良く、遥か彼方まで連なる壮大なアルプスの山々の景色を毎日楽しむことができました。
ダボスの夜は気温が-15〜-20℃まで下がり、防寒対策が十分必要です。外出すると露出した顔が冷気で痛く感じます。夕食はスイス料理、イタリアン、中華などを日替わりに食べに行きましたが、やはりチーズフォンデュが印象的でした。日本で食べるものより非常にコクが強く匂いも強烈です。ほかの日本人の先生方からは一度食べたら敬遠してしまうとの声も聞かれましたが、長崎組の2人は好みに合いワインとともに美味しくいただくことができました。
今回のコースで、外傷、骨折治療に対して原理や理論に基づいた系統的な考えを学ぶことができました。朝早くから夜遅くまで勉強、滑り、勉強、飲み!とかなりハードな毎日でしたが、外傷、骨折治療の見識も深まり、スノーボードの腕も上がり充実した日々を送ることができました。また各地の先生方と知り合うことができ、いろいろな意見やお話を聞けるよい機会でした。よく学びよく遊んだ有意義な旅でした。
最後に、このコースを受けるにあたりご配慮いただいた先生方や不在中にご迷惑をおかけした先生方に感謝いたします。今後、後輩の先生方にもこのような国内外のコースや研修などに積極的に参加し、どんどん新しいな知識を得てもらいたいと思います。