第10回 キアリセミナー報告/2010-08-31

  • 千葉 恒
  • 長崎大学 出身
  • 2001年 入局

2010年8月8日〜11日の4日間にかけて久留米大学医療センターにて行われました「第10回久留米キアリセミナー」に参加しましたので、その内容を報告いたします。
 日本股関節学会では、どのような患者さんにどの骨切り術を選択すればいいのか、ということについての一定の基準が明らかにされていない状況ですが、近年「キアリ骨盤骨切り術+大腿骨外反骨切り術」が全国に浸透しつつあります。久留米大学はその術式のメッカとして有名な施設であり、井上明生先生(前久留米大学教授、現在柳川リハビリセンター院長)が10年前よりその技術の伝承を目的としてセミナーを開催しています。
 見学の形式としては、今年は全国より9名の参加者が選ばれ、1日目と3日目が講義、2日目と4日目が手術見学(全6例:2例で手術助手、4例で見学ができます)でした。参加者は同じホテルに宿泊し、夜は毎晩飲み会という、ほぼ合宿状態で、骨切り術に関する議論や各地の医療の状況を話し合ったりしました。
 以下に僕が学んだ各論を示しますが、僕の誤った解釈もあるかもしれませんのでご了承ください。
 手術適応は(1)亜脱臼性股関節症(2)年齢:50歳以下(55歳以下も考慮)(3)ROM:屈曲60°以上(4)時間をかけた治療ができる(8週より部分荷重)、これらを満たす患者さんです。
 大転子を切離して小殿筋と関節包の間を丁寧に展開し骨盤骨切り部に到達します。関節包を損傷せずに展開することが重要です。関節包の付着部を目安に骨切り高位を決定し、チュークソーを用いて15°切り上げで骨切りします。骨切り高位が低くならないように注意します。被覆80%を目標に骨盤を移動させます。大腿骨はレシプロソーで骨切りし、20°外反し、スクリューで固定します。その際、遠位骨片をやや外側に移動させますが(将来ステム入れやすいように)これには細心の注意が必要です。スクリューを強斜に挿入することや、 大転子の骨接合にも技術を要します。
 井上先生の治療のコンセプトとしては、成績向上のためにはいかなる合併手術も貪欲に取り入れる、という姿勢です。よって、適応を選んで、臼蓋への骨移植、ハムストリング腱切離、術後のジグリング(貧乏揺すり)指導(軟骨再生を期待)、アレンドロネート投与(骨頭圧壊の予防)なども追加して行っていました。
 セミナーの楽しみとしては、手術見学や飲み会を通して、全国の志を同じくする医師と親交を深めることができることと、治療に関する細かな工夫も知ることができること(日本中のいい所を集めたらいい手術になる)であり、これを実感したセミナーでした。
 長崎大学整形外科では、他施設への手術見学や、セミナー参加、国内留学や海外留学を奨励しており、長崎にホームを持ちながら、自分の興味のある世界を見に行けるというすばらしい環境にあります。今回の見学に際し、サポートしていただいた同僚に感謝いたします。